ＭＣＩとは、軽度認知症障害と言い、認知症の前段階と考えられる状態の事です。
そのままでいると１年で１０％程度の人が認知症になると言われています。
この検査の目的はアルツハイマー型認知症になる可能性のあるＭＣＩを早い段階で見つけ
ることにあります。
では、なぜそうする必要があるのでしょうか？
　それは、アルツハイマー型認知症には現在のところ根本的な治療法が無いからです。
しかし、根本的な治療法はないのですが、認知症になったとしても進行を遅くする方法は
あります。認知症が進行しても治療は出来ますが、治療による利益は比較的小さくなりま
す。やはり認知症治療には早期発見・早期治療が重要ですし、もっと重要なのは予防です。
この検査をして認知症になる可能性を知ることで有効な対策を早くから行うことが出来る
ようになります。
　また、認知症になる可能性を知ることは、個人の生活の上で非常に重要なことであるの
は勿論ですが、家族にとっても重大な関わりがあります。それは、認知症になると色々な
ことが管理できなくなってきますから、経済的な事項（特に自営業をされている方など）
は早めに対応を考えておく必要もあるからです。この検査をするメリットは、リスクを知
ることで将来への備えをする時間的・心理的余裕を得ることが出来ることです。

　アポリポタンパク質は、脂質代謝に関与する酵素群の活性化あるいは補酵素として働く
一群のタンパク質です。ＡｐｏＡ、ＡｐｏＢ、ＡｐｏＣ、ＡｐｏＥの４種類があり、
ＡｐｏＥは主として肝細胞で産生され、全身の他の臓器へのコレステロールや脂肪酸の運
搬に関与しており、アルツハイマー型認知症と関連が強いと言われてます。そのＡｐｏＥ
をコードする遺伝子がＡｐｏＥ遺伝子です。ＡｐｏＥには、野生型（正常）のＥ３と非野
生型のＥ２、Ｅ４があります。Ｅ４をコードする遺伝子をε４といい、その遺伝子を持つ
とアルツハイマー型認知症のリスクが上がると言われてます。ε４ヘテロ（ε４を一つ持つ）
だと、アルツハイマー病発症のリスクが２～３倍、ε４ホモ（ε４を二つ持つ）だと、アル
ツハイマー病発症のリスクが約１２倍と言われてます。ＡＰＯＥ-ε４はアルツハイマー病
に最も関連性の高いリスク遺伝子ではありますが、持たない人でもアルツハイマー型認知
症を発症することはあります。